青山美智子さんの最高傑作!「赤と青とエスキース」

これまで読んだ小説の中で、1番好きなのは青山美智子さんの「木曜日にはココアを」。それを越える作品に出会った。青山美智子さんの「赤と青とエスキース」。柔らかく温かく、癒されるような雰囲気の「木曜日にはココアを」とは対照的な、赤や青が持つキリッとした雰囲気がある「赤と青とエスキース」。この記事では、2022年の本屋大賞2位を受賞した「赤と青のエスキース」のあらすじ、見どころ、感想を書く。



あらすじ

1枚のエスキースをめぐる、5つの「愛」の物語

メルボルンの画家が描いた1枚のエスキース(下絵)。
その絵は誰が所有し、どこに飾られ、
価値はどう変わっていくのか。

青山さん本人も、本の内容や見どころを聞かれても、
「ネタバレになるから言えない」と言うほど、
まだ読んでいない人にどう説明するか難しい作品。

絵は変わっていないのに。
変わるのは、世の中の価値観だ。
描いた本人の想いとは無関係に。



感想

赤と青の対比がおもしろい

タイトルの「赤と青とエスキース」、章のタイトル「トマトジュースとバタフライピー」や「赤鬼と青鬼」、物語の中では「赤信号と青信号」というように、本書では赤と青の対比が多く登場する。様々な人物が登場し、みんなどこかでつながっているという、青山さんが得意とする設定は守りながらも、斬新な作風。

結末を知った時、体中に勢いよく血がめぐっていくような興奮をおぼえた。1冊の本の中で、登場人物をここまで深く、微細に描くことができるのは、青山さんしかいないのでは?とさえ思った。



作者について

アイデアが思い浮かばないと悩んだことはなく、
むしろ、書きたいことがいっぱいで、
自分の人生の中で書き切れるのか心配なくらい。

新人賞を受賞したのが23歳のとき、作家デビューはそれからだいぶ後、47歳のとき。「赤と青とエスキース」の著者、青山美智子さんは、小学生の頃は漫画家になりたかったという。人物は描けても背景が描けなかった。しかし、物語を書きたいという気持ちはずっとあったので、小説家になることを決めた。

小説のプロットを立てるときは、芸能人を思い浮かべて表情や行動をイメージしていく。様々な職業の登場人物を描くが、インターネットの情報だけではなく、なるべく取材するようにしているとのこと。



水彩作家 U-ku

めぐるべくして、めぐりあった2人。

小説の設定しか決まっていなかった段階で、青山さんが出会ったのは、U-kuさんの「春一番」という絵。その絵は、本書の装丁となった。青山さんは、その絵にほれ込み、物語をその絵の世界観に近づけていったという。

青山さんとの対談の中で、U-kuさんは

絵というのは
「その人の今まで歩んできた人生のなかでしか見れない見方」がある。
私しか描けない絵を描いて、
その人しか見られない見方をしてほしい。

コロナ禍で、インプットが減ってしまったことで、創作に影響があった。インプットあってのアウトプット。感情の動きが得られない時期が続くと、生みの苦しみにつながると言っていたのが印象的。

青山さんはこう表現

小説の神様と芸術の神様が手を組んで作ってくれたと感じる作品。


絵と額

絵に魅入られながら、確かに額縁も見ているのだから。

美術館に行って絵画を見るとき、人は絵だけを見ていると思いがちだ。本当は、額も含めた全体を見て、その絵が好き、キライ、感動する、など気持ちに変化が出ているはずなのに。この本を読んで、改めてそのことに気づかされた。

タダっていうのとは違うぞ。プライスレスだ。

絵にぴったり合う額を選ぶことに情熱を傾けている人がいる。現在は水彩作家として活動するU-kuさんも、以前は額縁工房で働いていた。青山さんが額の取材をするために工房を訪れたことがきっかけで、U-kuさんと出会った。


絵と額縁が完全にマッチした状態のことを完璧な結婚と呼ぶ

こういう人がいいっていうんじゃなくて、
この人がいいって思えたら、それが完ぺきな組み合わせ。

絵と額の関係は、人と人の関係にも似ている。互いに引き立て合える2人だと、完璧な組み合わせだと言えるのだろう。


まとめ

点いては消える青い光を、ただ見つめる。
思えば私はいつもいつも、走っていた。
ここで急いで渡ったところで、たいして違いはないのに。

読み終わって1日たっても、まだ物語の世界に引き込まれたままだ。U-kuさんのことを青山さんは、「作品は寒色が多いけど、情熱の赤を内に秘めた人だ」と表現していた。「赤と青とエスキース」は、物語と装画が互いに引き立て合い、最高の1冊となっている。ぜひ読んでほしい。


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